「こんなに希望を叶えてあげたのに、やっぱりできないって言われたんです!」
クライアントは、抜擢した従業員に新しい事業所を任せるため、あらゆる希望に応えて準備を進めてきました。多額の資金も投入しています。それなのに、直前になって「やっぱりできません」と断られたのです。
クライアントの言葉と表情には、従業員に裏切られたような怒りと悲しみ、そして落胆がにじんでいました。
私は、「どうしてそんなにも希望に応えてあげるんですか?」と問いかけました。
クライアントは「大変なことを任せるので、なんだか申し訳ないし…その人は、環境的にもちょっと可哀想で…」と答えました。
この『可哀想』が、まさにクライアントのスイッチでした。(実際にはその従業員は「可哀想な人」ではなく、社長の目にはそう映っているだけです。)
可哀想な人を見ると、つい助けてあげたくなる。救ってあげたくなる。優しくて共感力のある経営者ほど、無意識にこのパターンに陥りがちです。
しかし、深堀りしていくと、「助けてあげることで、良い経営者と思われたい」「認められたい」「感謝されたい」という思いが、行動の裏に隠れていました。優しさの裏に潜む、共依存の名残です。
社長の優しさ、時間、資金。それらはすべて貴重な資源です。その資源をどこに投入するのが最適かを見極め、意識的に選択することが重要です。
可哀想な人に投入し、搾取され、交換として承認されることを得るのか
自立し、意欲ある人に投入し、循環を生み出すのか
意識的な選択は、経営者としての成熟度が問われます。
クライアントも気づきました。「面接でつい『可哀想な人』を採用しそうになっていました!危ない、危ない!」
これからは、一緒に仕事をしたいと思う人、共に進んでいきたいと思う人を選んでくださいね。
社長の優しさ、大切な資源を、効果的に使っていきたいものです。それは自分(自社)を大切にし、最大限に活かしていくことにもつながります。

この記事へのコメントはありません。